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【光村コラム】新規事業担当者として知りたい「学び方」の話

※本記事は2022年5月24日にBASE Qメールマガジンより配信された内容を転載しております。

皆さん、こんにちは。BASE Qの光村です。

7月5日より、BASE Qによる2022年度イントレプレナー成長プログラム「Qスクール」を開始します。
現在、受講生を絶賛募集中ですが、すでに多くの企業からの申し込みをいただいており、人材育成にかける各社の強い想いを実感しているところです。

新規事業の担い手であるイントレプレナーですが、最初から完成された人はいません。
多くの人は、大手企業に入社し、既存本業や本部スタッフの業務を一定期間従事し、その後に新規事業を担当することになります。つまり、イントレプレナーとしては「初心者」からスタートすることになります。

現実問題として、このような人たちが最初から新規事業領域で活躍することは稀です。
新規事業は、大手企業のその他の仕事とは異なる考え方、やり方で臨む必要があり、その認識が不十分な状態で活動してもいい結果にはつながりにくいのです。

そこで重要になるのが「イントレプレナーをいかに育てるか」という人材育成論、教育論になります。

「優れたイントレプレナー」の条件とは

まず、「優れたイントレプレナー」とはどんな人材か、を整理してみましょう。
BASE Qではこれまでの研究の結果、イントレプレナーとして備えるべき重要な3つの要件として「マインド」「スキル」「ネットワーク」を挙げています。

一般に、仕事ができる人というと「高スキル」という言葉が浮かんでくるかもしれません。
もちろん、イントレプレナーにとってもスキルは重要であり、新規事業を生み出すための問題発見能力やアイディア発想力、アイディアを事業として具現化する能力、さらにはそれを会社の中で通す説得力や調整力など、数え上げればきりがないほどです。

しかし、それらのスキルよりも重要なのが「マインド」ではないかとBASE Qでは考えています。BASE Qではイントレプレナーのマインドを構成する要素として、次の5つを挙げています。

・社会起点
・オープン
・覚悟 or 天然
・挑戦心
・学習意欲

本稿では各項目の詳細説明は省きますが(ご興味がある方は、BASE Qの個別相談会にお申し込みください)、いずれも新規事業に取り組むにあたってのモチベーションや原動力につながるものであり、逆に言えばこれが揃っていないとちっとも身が入らないことにもなりかねません。

ここに挙げた要素は、そもそも仕事をする上で必要なものにも思えるのですが、案外に備わっていない人は多いものです。

自分の業界のことや会社のことには興味はあるけれど、社会に存在するさまざまな課題に対して意識が向いていない。
オープンイノベーションの時代、社外のパートナーと連携して新規事業に取り組むことが不可欠なのに、すぐに業者扱いしてしまう。失敗を恐れてチャレンジすることができない。
「大企業あるある」と言われがちなことではありますが、これらの多くはイントレプレナーとしてのあるべきマインドセットがなされていないから起こる事象なのです。

イントレプレナーにとっては「ネットワーク」、特に社外ネットワークも重要です。
社外の連携パートナーを直接探したり、紹介してもらったり。それ以外にも、さまざまな人から刺激を得て、自身のスキルやマインドに好影響を与えることも期待できます。

イントレプレナー人材の成長には時間がかかる

では、これら「マインド」「スキル」「ネットワーク」をどのように向上させていくか。いくつかポイントがあります。

1.体系的に学ぶ
昨今、新規事業関連のセミナーは多くあり、それぞれ単発では役に立つ内容になっています。
一方、新規事業のつくり方というのはある種の「科学」であり、体系的・網羅的に身につけることで大きな力を発揮します。無料・単発のセミナーだけを自分で組み合わせて体系化することは難しいと思います。
また、自分の苦手、弱みとなる部分こそ積極的に学ぶべきですが、自分でセレクトしていると、ついついそこから逃げてしまうという人は多いと思います。ですので、体系的にセットアップされている場で学ぶことが重要です。

2.一定期間の中で繰り返し学ぶ
冒頭に述べたとおり、新規事業の考え方ややり方は、その他の仕事とは大きく異なります。
これはつまり、これまで染み付いた思考や行動の習慣を脱却し、塗り替えなければならないということになります。
これだけの“大手術”をするのに、一回話を聞いたくらいでは効果は期待できません。そのときはわかった気になっても、実際にそういう思考、行動をする場にいけば過去の習慣にとらわれてしまうものです。
ある程度の期間をとり、その中でさまざまな角度から反復継続的に学ぶことで、深い理解が備わってくると言えるでしょう。

3.実践者から学ぶ
新規事業を“教科書”的に学ぶことは、あまり意味がありません。
「一応はこういうことだ」という理屈はありますが、そこには無数の“例外”があり、それを考慮しながらその場その場での最適解を探していくのが新規事業の取り組み方です。
また、私たちは大手企業という枠組みの中で新規事業に取り組むわけですが、会社の文化や仕組み、現状も千差万別です。それぞれの会社の状況に合った取り組み方、話の通し方を模索する必要があります。
このようなことは、自身が大手企業で新規事業を実践し、加えて多くの会社の事例を見てきた人こそ理解しているところがあります。そのような人から学びたいものです。

4.いろいろな人から学ぶ
前項で述べたとおり、新規事業の方法論には「一つの正解」はなく、取り組んだ人であればそれぞれが経験に基づく知恵を持っています。したがって、一人の人から学ぶだけではなく、多くの人から吸収することで、より効果的な学習となります。
これはつまり「ネットワーク」に参加しよう、ということです。大手企業で新規事業に取り組む同じような境遇の人からはもちろん、スタートアップ起業家の話を聞くことも、大手企業の状況と相対化する必要はありますが、得るものは多いと思います。
このようなネットワークは「社外」にあります。
積極的に社外に出て、このような属性の人たちとの交流を拡大、深化させていきたいところです。
ただし、何も持っていない状態でこのようなネットワークに参加しても、端的に言えば「影が薄い」「何をやっているかわからない」人で終わってしまい、交流を楽しむことはできません。
自分が何をやりたい人なのか、自分が他人に対して提供できることはあるか、自分は具体的に何を欲しているのか、何より自分は新規事業に真剣に取り組もうとしているのか。このようなマインドを鍛えながら、ネットワークに参加していくことが肝要です。

ぜひ「Qスクール」にご参加ください

ここまでお読みになった方はお気づきかと思いますが、上に挙げた学びの環境が揃っているのが「Qスクール」です。
これらの要素に加えて、スクール履修後のイントレプレナーとしての到達度を「マインド」「スキル」「ネットワーク」の軸で可視化する「iスコア」によるフィードバックも好評をいただいています。

既に、昨年度の受講企業からの継続申し込みを多くいただいており、受講枠に大きな余裕があるわけではないのですが、新規参加企業も募集中です。
詳細は添付の資料にまとめておりますので、ぜひご一読いただき、参加を検討いただければと思っております。

最後に「学ばない」ことの弊害を書きます。
大手企業の中には、新規事業に関して明確な予算が決まっておらず、「費用対効果」の観点から担当者に対して適切な教育投資を行わない会社が見受けられます。
もし、その会社の担当者が、ハナから学ぶ必要のない“天才起業家”であるならば問題ありませんが、そうでない場合、おそらくほとんど何もできずに半年、1年を空費することになるでしょう。
そこで失うのは、より大きな金額であるその担当者の人件費と、貴重な時間です。新規事業は社外の競合やスタートアップと戦っていく領域ですので、時間との勝負です。また、日本の大手企業の異動サイクルは短く、新規事業部門であっても3〜4年で異動するケースが多い。
この期間の半年なり1年を無為に過ごすことは、会社にとっても担当者本人にとっても不幸なことだと思います。

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光村圭一郎(こうむら・けいいちろう)

1979年、東京都生まれ。 早稲田大学第一文学部を卒業後、講談社入社。2007年、三井不動産に転職。 ビルディング本部にて開発業務、プロパティマネジメント業務に従事。その後、2012年より新規事業担当。三井不動産初の本格的なインキュベートオフィス立ち上げを主導。2018年には、東京ミッドタウン日比谷に『BASE Q』を開設し、大手企業のオープンイノベーションを支援するプログラムの提供を開始。