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突如の大ブーム『Clubhouse(クラブハウス)』とはなんだったのか

※本記事は2021年3月4日にBASE Qメールマガジンより配信された内容を転載しております。

2021年1月、突如としてブームになった『Clubhouse(クラブハウス)』。皆さんの中にも使ったことがあるという方は多いかと思います。

ご存じない方のために簡単に説明をしておくと、Clubhouseは米国のスタートアップが開発した音声SNS。アプリ内ではさまざまなテーマでルームが開設され、ユーザーはそれらに参加し、話を聞いたり、ときにはスピーカーにまわったり、といった使い方をします。

Clubhouseは招待制。さらに、ルーム内で話されたことは口外してはならず、ログも残らないことから「リアルタイムで聞かなければならない」という飢餓感が煽られた側面もあり、一時は招待枠がメルカリで高値で売買されるという現象も起こりました。

突然のブームから1ヵ月ちょっと経ち、当初の熱狂は冷めたタイミングではありますが、ここでClubhouseとはなんだったのかというテーマで考えてみたいと思います。

みんな「出会い」と「雑談」に飢えていた

まず、Clubhouseが爆発的に流行った理由ですが、根底には「出会い」と「雑談」に対する欲求があると思います。

Clubhouseでは、自分のアカウントが見ず知らずの人にフォローされるのは当たり前のこと。ふと入ったルームで面白い話をしている人がいればその人をフォローしますし、ルームのリスナーのプロフィールを見て、趣味趣向が合う人をフォローすることも珍しいことではありません(ゆえに、プロフィールの情報量や書き方の巧拙がClubhouse体験の質に直結することになります)。
つまり、Clubhouseは新たな人との出会いのハードルを大きく下げていると言えます。

そして、このアプリの中で行われることの基本は、文字どおり「雑談」です。
一応、ルームにはモデレーター、スピーカー、リスナーという分類があり、モデレーターには議論を仕切ることを期待されている部分があります。しかし、使える手段は音声のみでスライドを共有するようなことはできず、あまり高度なモデレートを展開することは難しい。また、ルームはいつでも出たり入ったりできるので、リスナーがそこでのトークの流れを把握していることを過度に期待できません。ですので、頭から終わりまできれいに流れをつくるというよりも、その場のノリで話題もいったり来たりしながら、くらいのやり方が適していると言えます。

コロナ禍によるリモート主体の働き方や飲み会、イベント等の減少により、多くの人が出会いと雑談の機会を失いました。そんな中、Clubhouseが人々の持て余した時間に上手く入り込んだのでしょう。

ハードルが極めて低い

さて、このClubhouse。流行り始めた当初は、芸能人も多数参戦し、最大人数である5000人も集まるルームがいくつも林立するなどの活況を見せました。日本時間の夜はサーバが不安定になることも度々あり、それでもなお毎晩のように多くのユーザーが集まるという状況が繰り広げられました。

冒頭にも書いたように、このような熱狂は既に冷めており、今はだいぶ落ち着いた状況と言えます。人によっては「過疎った」「終わった」という人もいます。

Clubhouseが今後も生き残るのか、それとも一過性のブームで終わってしまうのか。それを考えるにあたり、このサービスの長所/短所を私の観点でまとめてみたいと思います。
長所は、上述のとおり出会いと雑談というニーズに応えてくれること。しかも、それ実現するハードルが非常に低く設計されています。

アプリにログインさえすれば、いつでもさまざまなルームが開かれており、何かしら興味を惹くテーマを見つけることができるでしょう。公開ルームであればジョインするのにも許可は必要なし。ただ聞いているだけでも構いませんし、何か話したいことがあれば手を挙げればモデレーターによってはスピーカーに引き上げてくれることもできます。退出するときも「leave quietly」というボタンを押せば、中にいる人たちに気づかれることもなく出ることが可能です。
ルームに入る、話を聞く、ルームから出るという一連の動作に対して多大な遠慮や気兼ねをする必要がないというのは、大きな価値があると思います。

自分がルームを開くことも簡単で、よほどマニアックなテーマでなければ、誰かしらが入ってくれて、会話することもできます。自分でリアルなトークイベントを開催する、Youtubeで話すなどの方法に比べれば、かなりコストが安いと言えます。

有料イベントレベルの話が気軽に聞ける

また「音声のみ」というコミュニケーションの利点もあります。

例えば、Zoomのような「音声+ビデオ」のコミュニケーションツールの場合、自分の顔を晒して話すことが求められるのですが、これに抵抗を覚える人は少なからずいるでしょう。Clubhouseの場合、音声のみでOKですから、ベッドや極論お風呂に入っている時間も参加することが可能です。

また、そこそこの著名人がふらっと訪れては喋って帰る、というような使い方にもフィットしています。実際、著名人も夜の会食がなくなったことで時間に余裕があり、またちょっとした隙間時間にログインしている。結果、本来であれば有料イベントのキーノートで話されるようなクオリティのトークが日常的に、無料で聞くことができます。

それに対して短所はどうか。
ルームのクオリティは正直、玉石混交。ただ、つまらないルームからはすぐに出てしまえばいいので、短所とは言えないでしょう。

時間あたりの情報インプットが薄いという指摘もあります。同じ情報量をインプットするのであればテキストを読むのが一番速く、音声や動画は”時間泥棒”だというわけです。
それはたしかにそうなのですが、音声のみであれば「ながら聞き」も可能なわけで、工夫次第と言えるのではないでしょうか。また「話すだけ」というアウトプットは、文章を書くのに比べて圧倒的に簡単です。わざわざテキストでは書かないような話がClubhouseで聞けるとすれば、その恩恵は大きいように思います。

その他、自分がモデレーターやスピーカーをやっているときに、見知らぬ人に絡まれるリスクはありますが、それは第三者を入れて話をするときにはどんな方法でも発生し得るので、Clubhouseに限った話ではありません。

ここで始まった関係を広げられるか

という具合で、私はClubhouseを気に入っており、今後も使い続ける可能性が高いのですが、コロナ禍が終息し、夜の会食やイベントが復活したらどうなるか、というのは不透明です。

いや、もちろんコロナ禍が明けたとして、昔どおりの日常が戻ってくるとは限らないわけですが、今(緊急事態宣言下)とは異なる生活にはなるわけで、そのときにClubhouseをClubhouse足らしめている要素が残るかどうかは、蓋を開けてみないとわかりません。

私が懸念するとすれば、「出会い」の質です。
上ではClubhouseが新しい出会いのツールとして機能していると書きましたが、より本質的に考えていくと不満もあります。それは、Clubhouseで出会った人と関係性を継続、発展させられるかという点です。

ClubhouseにはTwitterとInstagramのアカウントを紐付けることができるのですが、FacebookやLinked In、個人のメールアドレスやWEBサイトへのリンク機能はありません(プロフィール欄に書き込んでおくことはできますが、リンクされるわけではないので検索やコピペの手間が発生してしまう)。日本のビジネスパーソンでTwitterやInstagramをつながりの手段として活用している人は少ないでしょうから、Clubhouseで出会い、仲良くなりフォローしあっても、その関係性が今のところはClubhouseのみで閉じてしまう可能性は大です。

今後、Clubhouseが他のSNSとどのような連携戦略をとるのか、それともとらないのか。場合によっては他のSNSにM&Aされるシナリオもありそうです。
個人的には、このあたりがClubhouseの命運を握っているのではないかと思っており、引き続きウォッチしていきたいと思います。
(ちなみに、光村のアカウントは「koumura1979」で検索可能です。よろしければフォローしてみてください)

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光村圭一郎(こうむら・けいいちろう)

1979年、東京都生まれ。 早稲田大学第一文学部を卒業後、講談社入社。2007年、三井不動産に転職。 ビルディング本部にて開発業務、プロパティマネジメント業務に従事。その後、2012年より新規事業担当。三井不動産初の本格的なインキュベートオフィス立ち上げを主導。2018年には、東京ミッドタウン日比谷に『BASE Q』を開設し、大手企業のオープンイノベーションを支援するプログラムの提供を開始。